特定調停のメリット/デメリット

024_特定調停

自身で申立てれば費用が安くて済む「特定調停」.

本稿ではそれ以外のメリットとデメリットについてまとめました。

特定調停のメリット

費用が安い

特定調停は自己破産個人再生と異なり、比較的簡易な手続きなので、「弁護士や司法書士に依頼することなく自分で申立てることができ、費用が安くて済む」というのが最大のメリットでしょう。

例えば、債権者(銀行やクレジットカード会社、消費者金融など)が5社で弁護士に任意整理を依頼する場合、1社当たり3万円~4万円程度の弁護士費用が必要ですので、合計すると所要費用は15万円以上となります。

一方で自分で特定調停を行う場合は、申立手数料と手続費用を合わせても5,000円程度で足りますので、かなり費用が安い!と言えます。

手続きが簡易・迅速

特定調停は、裁判所における手続きであるものの、「通常、裁判所への出頭は2回程度しか行われず、申立後、2か月程度(目安ですが)で手続きが終了」します。

したがって、手続きの申立てから終了するまでに半年程度を要することが多い自己破産手続き個人再生手続きと異なり、非常に迅速に手続きが進行します。

過払い金が生じていれば、借金を減らせることも

特定調停の手続きに記載した通り、特定調停においては債権者との間で利息制限法を超える金利での取引がある場合、払い過ぎている金利分だけ借金を減らす、という処理(=いわゆる「引き直し計算」)を行いますので、返済しなければいけない借金総額が減る*こともあります。

  • 平成18年(2006年)よりも前から長期間にわたって取引をしている場合には、返さなければいけない借金の額が大きく減ることもありますので、あきらめずに確認することが大事です。

取り立てや督促が止まる

申立書を裁判所に提出し、それが受理されて各債権者に通知されると、返済の督促が止まります。多くの債権者から、次から次へとひっきりなしに督促の電話がかかってきている場合などは、精神的に非常に辛い時間となりますが、この特定調停の申立てによって、一息つけることになりますね。

官報に名前が載ることはない

自己破産手続き個人再生手続きを利用すると、官報に名前が載ってしまいます。しかし、同様の裁判所における手続きであっても、特定調停の場合は官報に名前が載ることはありません。

強制執行を止めることができる

「公正証書」*を作成している債権者への返済が滞ってしまうと、毎月支払われる給与や、自己名義の不動産などの財産を差し押さえられて強制的に借金を回収されてしまうことがあります。

  • 公正証書とは、公証役場に執務する公証人(長年にわたって法律実務に携わっている法律の専門家)が作成する公文書です。金銭消費貸借契約が公正証書によって作成された場合、債務者が約束通り返済できないと裁判所の判決などを経ずに強制執行手続(債務者の財産を差し押さえるなど)に移行することができます。すなわち、当事者間だけで作成される通常の契約書に比べて強力な効力を有していることになります。

しかし、このようにある特定の債権者だけが一方的に返済を受けると、他の債権者の「取り分」が減ってしまうとともに、債務者の生活も立ちゆかなくなるおそれがあります。

そこで特定調停においては、この「強制執行手続の停止を命じることができる」と定められています。

たとえば、ある債務者から給与の差し押さえを受けていて、他の債務者からの取立ても厳しいような場合であっても、特定調停を利用すれば差し押さえを停止し、全体の返済計画を考え直すことができます。

合意に至らなくても調停が成立することも

特定調停においては、調停委員の仲裁のもと、債務者と債権者が返済計画の見直しについて合意を図るわけですが、合理的な返済計画であっても債権者が不当に応じず、調停が成立しない場合もあります。

しかしながら、そのような場合には、裁判所が職権で事件の解決のために必要な決定を行うことができます。これを「特定調停に代わる決定といいます。(通称「17条決定」と呼ばれています)

この決定に対して2週間以内に意義が申立てられない場合(多くの場合、債権者は異議を出すことはありません)、この決定は判決と同じ効力を有することになります。

つまり、調停が成立した場合と同じ効力が生じることになるわけでなので、債権者と合意することが必須である任意整理に比較すると解決に至る可能性が高いといえます。

特定調停のデメリット

世の中には甘い話はないわけで、債務整理も同様です。メリットの多い「特定調停」にも当然のことながらデメリットもあります。では、どんなデメリットがあるのでしょうか?

裁判所に出頭しなければならない

特定調停を本人が申立てた場合、当然のことではありますが、自ら裁判所に行かなければなりません。2回程度で終了するのが一般的ですが、債権者が多かったり、交渉が難航したりすると3回、4回と続いてしまうことがあります。

期日は平日の昼間にしか開かれませんので、平日に仕事を休むのが難しい方にとっては、かなりの負担になるかもしれませんね。

ブラックリストに載ってしまう

約束(契約)通りの返済が困難なために特定調停を利用するわけですから、任意整理個人再生、自己破産と同じように、信用情報機関に自己情報が登録されてしまうのは避けることができません。

過払い金を取り戻すことはできない

メリットでは「過払い金を差し引かせることで、借金の額を減らせる可能性がある」と書きましたが、そこから更に進んで、違法な利率での取引期間が長く、そもそも現在の借入残高を返す必要がなく、むしろ過払い金を取り返すことができる状況であることが判明したとしても、過払い金を特定調停で取り戻すことはできません。

なぜなら、一口に過払い金を取り返すといっても、複数の論点があって、債権者としても、言いなりになって返還できるわけにいかず、調停委員としても判断しきれないからです。

過払い金が生じていて取り返す手続きをしなければいけない場合には、その部分については弁護士や司法書士に相談しなければいけないことになります。

「未払利息」や「遅延損害金」も支払わなければいけない

借金は大まかにいうと、「元本」と「利息」、「遅延損害金」から構成されています。「元本」と「利息」についてはご承知と思いますが、「遅延損害金」とは何でしょうか?

「遅延損害金」とは延滞利息のことで、約束(契約)通りの返済ができなくなった時点から発生します。また、支払えなくなってしまった時点から特定調停が成立するまでの間の利息を「未払利息」といい、特定調停が成立してからの利息を「将来利息」といいます。

特定調停が成立すれば、それ以降の利息である将来利息については支払う必要がないことがほとんであるものの、他方で未払利息や遅延損害金については支払わなければいけない結果になることがほとんどです。

債務整理としての特徴がよく似ている「任意整理」と「特定調停」ですが、「任意整理」との大きな違いがここにあります。「任意整理」において弁護士や司法書士が交渉すれば、この未払利息や遅延損害金についてはカットできることが多いのですが、「特定調停においては、任意整理よりも支払わなければならない金額が大きくなってしまうケースが多い」ということになります。

調停調書の成立によって差し押さえが可能に

特定調停が成立すると、「調停調書」合意の内容が記載されます。この「調停調書」は、裁判における判決と同一の効力を有しているので、債務者が調停調書の内容通りに支払えなくなってしまった場合には、債権者は強制執行の手続きを取ることができるようになります。

つまり、調停調書も内容が守られなければ、債権者は債務者の財産を差し押さえて競売をしたうえで、売れたお金から借金を回収したり、給与の4分の1を差し押さえたりすることができるようになるということです。

任意整理」の場合には、仮に債権者との約束を守れなくなってしまったとしても、そのまま強制執行まで行えるわけではないので、約束通りの返済ができなくなってしまった場合のリスクは特定調停のほうが大きいといえるでしょう。

 

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