債務整理のメリット/デメリット

01_債務整理(概説編)

債務整理には、任意整理・個人再生・自己破産などがあります。

これらの手続きは、カードローンやキャッシング、消費者金融(サラ金)からの借入に限らず、借金返済の滞納などで苦しくなってしまった場合に、法律で認められた借金整理の方法と考えれば分かりやすいでしょう。

ところが債務整理での借金問題解決を検討したいと思っても、

「債務整理をしたら、どんなデメリットがあるのかな…?」

「いくらなんでも、そんなウマい話があるわけないよね?」

などとご心配される方も多いと思います。

そこで、本稿では債務整理のメリットとデメリットを説明していきます。

債務整理のメリット

債務整理のメリットは、「債務超過や返済の滞納など、もはや自分ではどうにもできなくなってしまった借金の支払いを、法的な力で救済されること」に尽きます。

また、カードの支払いに苦しんでいる方の中には、一人で借金問題の悩みを抱え込んで、精神的に追いつめられているケースも多く見られます。その借金問題について専門家が債務者の代理人として、債権者と交渉・協議するなどして、介在してくれることで精神的な負担が減ることも、債務整理の大きなメリットです。

確かに「ブラックリストに載る」「官報に載る」などのデメリットも大きなものではありますが、債務整理のメリットをしっかりと把握して、自分の置かれている状況(収支状況や債務状況など)に適した債務整理方法を選ぶことが重要です。

将来利息や延滞損害金の免除

債務整理の大きなメリットの一つとして「将来利息*1や延滞損害金*2が免除される」という点が挙げられます。

  1. 今後の支払いにかかる利息のことです。借入に対して通常通りに返済する場合、「借金の原本」に加えて「契約で定められた利息」を支払うことになります。これを将来利息といいます。
  2. 定められた期日までに支払わなかった場合、相手方に対し損害賠償として支払わなければならない金額のことです。遅延損害金の利率は利息制限法によって10万円未満の場合は29.2%、10万円以上100万円未満の場合は26.28%、100万円以上の場合は21.9%と制限されています。 

自己破産の場合は支払いがゼロ(=借金がチャラ)になるので、将来利息を考慮する必要はありませんが、任意整理や個人再生では利息をゼロにした支払いが前提になっています。(任意整理・個人再生では基本的に今後の支払いの利息をゼロにして、元金を分割払いに変えていくという方法です)

利息をゼロにするということは、金銭的な負担が減るのはもちろん、それに伴って、月々の支払も減ることにつながります。例えば、6社から各50万円(金利18%)ずつ300万円の借金がある方の場合には、1ヶ月に支払う利息は6社合わせて4万5000円、年間で支払う利息は6社合わせて54万円という金額になります。

この利息をカットして、元金のみに返済金が支払いに当たるようになれば、急激に借金の支払いは終わるようになるというわけです。

また、滞納した場合に支払い義務が発生する「延滞損害金」についても免除されます。

完済日(=返済が完了する日)が明確になる

上で書いた通り、、債務整理を行った結果として、「今後の利息支払いの免除」および「延滞損害金の免除」、「債務に関する新しい返済計画」について債権者と合意に至ると、あとはきっちりと返済を実行するだけです。そして債権者と合意した金額を全額返済すれば、晴れて借金はなくなります。

つまり、債務整理を行うことで借金から解放されるまでの道のりとゴール(借金完済の期日)が明確になります。

「いつになったら、借金の返済は終わるんだろうか…?」

特に複数の会社へ利息付きの支払いを行っているとき(=多重債務の状態)に、しばしば感じる悩みですね。

この状況では、支払いの目処が見えないというわけですが、債務整理を行うことで確実に支払いの目処が立ちます。

借金返済では元本だけでなく、(当然のことではありますが)「利息」の支払いが発生します。この利息については、その計算方法もなかなか難しいものがありますし、実のところ、毎月の返済金額のうち、元本と利息の占める比率を把握している人も多くはありません。

しかし、債務整理(任意整理や個人再生)を行うと、完済期日が明確になります。すなわち、これまでの「いつ終わるとも知れない」借金返済が「〇〇年〇〇月末で完済」となるわけです。

容易にイメージできると思いますが、ゴールが見える(=完済期日が明確になる)ことは苦しい返済を行っている方にとっては、なによりの安心感をもたらすものです。

利息の支払いをゼロにすることで、決められた一定の金額を支払えば、支払いはなくなります。

例えば、元金を分割払いに変えていくということは、60万円の借金を毎月1万円ずつ支払っていけば、60ヶ月後(5年後)には確実に支払いが終わります。これが1年間に18%の利息付きだと、60万円×0.18=108,000円もの利息が発生している上に、返済がいつ終わるかもよく分からない状態になっているでしょう。

精神的に辛いのは何と言っても「先が見えない(=明るい将来をイメージできない)」ことです。

債務整理を行うことで、「借金返済のゴールが見える」ということは、言わば「人生をリセットできる」ことになるわけです。

借金自体を大幅に減少できる(個人再生の場合)

任意整理では、利息のカットをして返済の負担を楽にするというだけになりますが、個人再生では元金自体も大きく減らしていくことが可能になります。

個人再生とはというのは、大まかな言い方をすると、自己破産と任意整理の中間のような制度です。
つまり、自己破産と同様に裁判所に申し立てをするのですが、自己破産のようにすべての債務を免責にするというわけではなく、債務を大幅に免責(3分の1~5分の1程度)にしてもらって、任意整理のように、長期の分割払いにしてもらう、という制度です。減額幅は、任意整理より大きくなります。

債務を大幅に免責(5分の1程度)にし、それを3年で支払うという計画案(再生計画案)が裁判所に認可されれば、債務は計画案に記載された額まで減額されます。

そして、原則として3年での分割支払いが終われば、すべての債務がなくなります。返済期間については、特別な事情がある場合には、5年までの長期分割弁済が認められます。

任意整理とは異なり、裁判所により強制的に借金が減額されるので「任意整理で利息をカットしたり、月々の返済額を減らしたりしても、返し続けるのが難しい」という人(言い換えれば任意整理では対処しきれない債務を負う人)にとって魅力的な制度です。

では、どのくらい債務が減額されるでしょうか?

再生計画案が認可された場合に減額される金額は以下の通りです。

①債務額が100万円以下の場合        ⇒ 債務全額(減額なし)
②債務額が100万円以上500万円未満の場合 ⇒ 100万円
③債務額が500万円超1500万円以下の場合  ⇒ 5分の1
④債務額が1500万円超3000万円以下の場合 ⇒ 300万円
⑤債務額が3000万円超5000万円以下の場合 ⇒ 10分の1

例えば、全部で300万円の借金のある方であれば、返済額は100万円となり、全部で600万円の借金のある方であれば、返済額は120万円となります。

このように減額された金額を、再生計画案認可後、通常3年間(特別の事情があるときには5年間)で分割して支払っていくことになります。返済額が100万円となった場合の毎月の返済額は、約28,000円程度になります。なお、借金が減額される基準は下表のとおりです

債務総額 減額後の総額 毎月の返済予定額*
100万円 100万円 約28,000円
300万円 100万円
500万円 100万円
700万円 140万円 約39,000円
1,000万円 200万円 約56,000円
1,500万円 300万円 約84,000円
2,000万円 300万円

約84,000円

借金総額が300万円の方だと手続前の月の返済額が3万円以下ということはないでしょうから、月の返済額を抑えるという点でも大きなメリットになります。

「自己破産はせずに支払っていきたい。でも任意整理では支払っていくのは難しい…」
という方にとっては、個人再生は唯一の救済手段になるわけです。

精神的プレッシャーからの解放

「借金の悩みを誰にも相談できなかった…」

「1人でずっと悩みを抱えて眠れない日もあった…」

このように、苦しい借金返済を1人で続けている方にとって、金銭的な負担はもちろんのことですが、その精神的なプレッシャーはかなりのものとなります。

弁護士や司法書士などの債務整理の専門家に依頼して、本人の代わり(=代理人)として債務整理に携わってもらうことで、今後の返済計画にしっかりとした目処が立つことは、何より一番の安心感につながっていきます。

また、弁護士や司法書士に依頼すると、各債権者に「受任通知」が出状されます。債権者は、この「受任通知」を受領したら、以降は一切の督促行為(電話や郵便など)は禁じられます。電話が鳴るたび、あるいは家族に知られないように郵便物をチェックするなどの精神的な負担から開放される、という点もあります。

独力で(人に知られることなく)解決していこうとする姿勢は確かにすばらしいことですが、一人で思い悩むようになってしまった時には、すぐに専門家に相談するようことが何よりも重要です。

債務整理のデメリット

債務整理のメリットはお分かりいただけたでしょうか?

さて、世の中のどんな場合でも「ウマいだけの話」なんてあるわけないです(笑)

債務整理も同じことです。

合法的に将来利息を免除してもらったり、債務金額を大幅に(時にはゼロに)してくれるわけですから、そのメリットに見合ったデメリットも存在します。

・・・というわけで、債務整理のデメリットについて見ていきましょう。

信用情報に傷がつく(ブラックリストに載る)

債務整理共通のデメリットは「信用情報に傷がつく(ブラックリストに載る)」ことです。

誤解されがちですが、金融業界において、「ブラックリスト」というリスト自体は存在しません。では、いわゆる「ブラックリスト」とは、何を指しているのでしょうか。

例えば、あなたがクレジットカードをつくる、あるいはローンを組むなどを行ったとします。この際には、顧客情報(氏名・住所・生年月日・勤め先・年収など)が「信用情報機関」に登録されます。

しかし、ある一定期間返済が滞ったり、最悪の場合、破産したりした場合、「事故情報」が登録されてしまいます。この事故情報が登録されることを称して「ブラックリストに載る」、「ブラックに載っている」と呼ばれているのです。

この「ブラックリスト」を管理している「信用情報機関」は以下の通りです。

【信用情報機関の種類】

名称 加盟している金融機関
全国銀行個人信用情報センター(KSC) 銀行・信金・信組・農協系
株式会社 シー・アイ・シー(CIC) 信販会社系
株式会社日本信用情報機構 消費者金融系

そして、債務整理を行ったという「事故情報」が抹消されるまで、5~10年かかるとされています。つまり、その間は主に以下の行為(いわゆる「後払い」的な性質のもの)が制限されてしまいます。

・クレジットカードの使用

・賃貸をする際の保証会社の利用

・車のローンを組むこと

・住宅ローンを組むこと

・携帯電話の本体代金を分割払いにすること

言い換えると、「債務整理の支払いが終わるまでは後払いは控えなさい」というような、一種の罰則のようなものが「ブラックリスト」と考えれば、分かりやすいかもしれませんね。(ブラックリストについて詳しくはこちらをご覧下さい)

車を手放す可能性がある

債務整理をすると車を手放さなければいけない場合があります。

個人再生・自己破産を行う場合には、自動車ローンを支払っている車は手元に残すことはできなくなります。ただし、任意整理では大丈夫です。

一口に「手持ちの車を残せるか」と言っても、ローンの支払いが終わっていない車とローンの支払いのない車では、その取扱いは異なっています。

個人再生の場合には、ローンのある車は手放すことになります。ローンのない車はそのまま手元に置いてくことが可能ですが、清算価値の問題になっていきます。(詳細はこちらをご覧ください)

例えば借金総額が1,000万円ある人がいて、100万円の価値のある(=換金すれば100万円で売れる)を所有していたとします。(単純化するために他の資産はないものとします)

自己破産ではその車を売って100万円を総債権者に分配し、残った900万円について免責を受けることになります。一方、個人再生では1,000万円の借金は200万円まで減額され、これを原則として36回(3年間)で支払うことができれば、車を手放す必要はないことになります。(月に5万6000円程度の支払い)

自己破産の場合にも、ローンのある車は手放すことになります。ローンのない車は、市場価格で20万円以下ならそのまま置いておくことができますが、市場価格が20万円を超えるようであれば手放さなけえばいけない可能性が出てきます。

しかし、車がないと生活ができない環境であったりなど、車を所持することに相当の理由がある場合には、見逃してもらえるケースもあります。

任意整理では、車のローンに任意整理を行わなければ車はそのまま維持できます。

(車が必要な場合の債務整理について詳しくはこちらをご覧下さい)

 

保証人に迷惑がかかるケースがある

債務整理をすると保証人に迷惑をかけるケースがあります。

保証人付きの支払いは任意整理では外すことが可能ですが、個人再生や自己破産では手続きから除外することはできません。

保証人付きの借金(奨学金など)に債務整理を行うと、「あなたが支払いをできなくなった」と債権者カはみなし、保証人にその請求を行うことになります。

任意整理では保証人付きの借金に対しては手続きから外すことができますが、個人再生や自己破産では手続きから外すことができないので、事前に保証人にその旨を話しておく必要があります。

この場合、「保証人に支払いがいっても保証人も支払えない」という場合には、保証人も同様の個人再生や自己破産などの手続きを行う必要がありますので、十分に説明のうえ、合意してもらわなければいけません。

(保証人がいる場合の債務整理について詳しくはこちらをご覧下さい)

 

官報に自分の名前が載ってしまうことがある

 

個人再生・自己破産では官報に掲載されることになります。(任意整理では官報掲載されることはありません)

個人再生と自己破産の手続きを行うと、官報という国が発行している新聞のようなものに掲載されてしまいます。もっとも、官報を見る人は限られているため、官報に載るからといって、家族や職場にばれる可能性はほぼないといってもよいでしょう。(司法書士や弁護士などの専門家でも1度や2度は見たことがあるという程度です)

しかし、官報という記録には残ってしまうこと、一部の職種(警察官や税務署、警備会社など)は官報を多く見ているようなので、その手の職種の方は注意が必要になってくるかもしれません。

上にも書きましたが、任意整理では、裁判所に申立てを行うものではありませんので、官報には載りません。

財産を手放す可能性がある(自己破産のみ)

自己破産をすると自宅などの財産を手放す場合があります。

「自己破産をすると家がなくなる」・・・これは知っている人も多いことでしょう。

自分名義の家を守るなら任意整理・個人再生です。

任意整理では、住宅ローンを手続きから外せばよいので問題ありませんし、個人再生では「住宅資金条項付き」という申立てを行えば、自宅を失うことはありません。

自宅を失う可能性のある債務整理とは、自己破産のことを指します。自己破産では、財産価値のあるものは換価して借金の返済に充てていくという主旨のため、自宅などの高額な財産は売却されてしまいます。

但し、これも非常に市場価格の安い家(ワンルームで200万円ぐらいや地方で数百万円など)であれば、この金額を用意することで自宅を失わずに自己破産をすることも可能です。例えば、自己破産を行う前にいったん親族や知人に自宅を買い取ってもらい、自宅に住み続けることができた例もあります。

職業が制限されることがある(自己破産のみ)

自己破産には「資格制限」というペナルティがあります。これは、自己破産の申立から免責が認められるまでの期間は、一定の資格業務を使った仕事ができなくなるものです。

この資格業務の代表的なものとして、警備員・宅地建物取引士、生命保険募集人などがこれに該当します。その他、司法書士や弁護士などの「士業」や質屋・古物商などもこれに該当します。

但し、一生できなくなるわけではなく、破産の免責(破産が認められる)までの期間なので、数ヶ月程度その資格を使った仕事ができなくなる、と考えれば良いでしょう。

任意整理や個人再生では、このようなデメリットはありませんので、仕事に影響がでることはありません。

財産を没収される可能性がある(自己破産のみ)

自己破産の場合には財産を没収されることもありますが、借金をゼロにする代わりに一定以上の財産を持っている場合には、その財産が没収され借金の返済に充てられる仕組みになっています。

具体的には以下の通りです。

・99万円を超える現金を持っている場合

・預貯金が20万円以上ある場合

・将来支給されるであろう退職金の一部

(退職金が支給されている場合はその全額)

・20万円を超える保険の解約返戻金がある場合はその解約返戻金に相当する金額

上記のものが代表的な没収財産と言えます。

なお、任意整理や個人再生では財産が没収されることはありません。

 

以上が債務整理のデメリットになります。

債務整理を行う前に、このメリット/デメリットを十分に理解しておきましょう。

 

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