「利息がカットされる」
「借金の支払いが大幅に減少される」
・・・と言われても「そんなにうまい話がなぜ認められているの?」などと心配になる方も多いでしょう。
確かに債務整理をすることは可能です。
ただ、「債務整理」は、あくまで法的な手続きとして行っていくものです。
そのため、弁護士や司法書士(法務大臣認定)のみが行うことができるものです。
この記事では、債務整理の種類ごとに、その根拠をご紹介します。
任意整理~民法の契約自由の原則
任意整理は裁判所を介入させない簡易な債務整理です。
「私的交渉」の位置づけにある任意整理の法的根拠は民法の「契約自由の原則」に従ったもの、と言えます。
例えば「カードローンの借金」をどのように整理するかについて考えると、この「契約自由の原則」に則って、現在の「カード支払契約」を解除して、新しく「任意整理契約」を結んでいく、という形になるわけです。
カードでお金を借りたり、買物をする(決済する)という行為は法律的に「契約」の一つに該当します。カード利用で買い物(ショッピング)をしたり、キャッシング、カードローンでお金を借りている方は、この契約に従って、支払い(清算)を行っていることになります。
そして、契約には「解除権」というものが付いてきます[1]「附帯される」と言います。。この「解除権」によって、契約の解除は当事者双方[2]「カード支払」で言えば、カード会社とカードを利用する人の両方から、いつでも行うことができることになっています。
また、民法では「契約自由の原則」というものが認められています。
「契約自由の原則」とは公の秩序などに反しない限り、関係する当事者が自由に契約を結べるという民法上の基本原則を指します。具体的には以下の4点について自由に決められることを言います。
- 契約を締結するかどうか
- 契約を誰と結ぶか
- 契約をどのような内容で結ぶか
- 契約をどのような方法で結ぶか
任意整理の考え方は、以上の2点(「契約解除権」と「契約自由の原則」)を組み合わせたものとなります。
つまり、任意整理では「契約解除権」に基づいて、現在の契約内容を解除[3]クレジットカードの契約で言えば「クレジットカード申し込み時の支払い方法」を解除し、「契約自由の原則」に従い、カード会社の了解を得て新たな支払いの契約を結んでいく、ということになります。
もちろん、「契約自由の原則」に従えば、いくらクレジットカードの使用者が借金を減額したい、と希望しても、カード会社の了解を得られないと「任意整理契約」はできないことになります。
ただし、実際にはカード会社の中で「任意整理契約」を拒絶するところはほぼありません。[4]クレジット会社・銀行では100%了承を得られ、消費者金融では一部の街金が拒絶する程度です。
しかし、任意整理はあくまで自由契約の一種ですから、弁護士や司法書士の一方的な要求によって契約内容を決めることはできない、ということは注意しなければいけません。[5]裁判所を通さない「私的交渉」の結果として任意整理契約を結ぶことになります。
なお、カード会社の意向も踏まえた上で、「任意整理契約」の内容を決めていくことになりますが、一般的に「利息や手数料をカットすること」や「リボ払いの設定を白紙にすること」にカード会社が否定するようなことはまずありません。
「でも、カード会社が損害賠償請求することはないの?」
このように疑問を持たれると思いますが、「契約解除権」を行使して「任意整理契約」を結んでも、損害賠償請求をされることもありません。
以下の点が主な理由となります。
- 損害賠償請求をしてしまうと、任意整理はそもそも成り立たなくなってしまう
- 債務整理の中でも任意整理はカード会社にとっても一番不利益の少ない債務整理であること[6]ここが任意整理が成立する大きな要素です。
個人再生では大幅に借金は減額され、自己破産では借金はゼロになってしまうので、カード会社からすると、支払いが難しくなった場合に任意整理を選択してもらえるのは「自己破産や個人再生を選択されるよりはずっとマシだ」という考え(=最悪な状態ではなかった)になるわけです。
個人再生~民事再生法が根拠
個人再生が可能となるのは、「民事再生法」という法律が根拠となります。
「民事再生」という手続きは元来は法人向けのもので、「破産することなく、なんとか再生したい」という法人に向けて向け適用されていました。
しかし、民事再生は法人を対象としている手続きのため、個人が行うには手続きが複雑であり、ハードルが高かったものでした。
そこで、特に個人向けの再生手続きとして「個人再生法」が、民事再生法第13章で構成されることになりました。
個人再生法第一条には、「この法律は、経済的に窮地にある債務者について、その債権者の同意を得、かつ、裁判所の認可を受けた再生計画を定めること等により…」と規定されています。
つまり、「借金返済で生活費がほとんど残らない」とか「給料のほとんどが返済に消えている」など、経済的に窮地に陥っている方は裁判所に「再生計画」[7]生活の改善が図れると確認できる返済計画を提出して、裁判所がOKを出せば個人再生が認められるというわけです。
自己破産~破産法が根拠
自己破産は任意整理や個人再生と比べると歴史の深い整理方法です。
「破産法」という言葉も、一度はお聞きになったことがあると思いますが、自己破産の破産手続きは破産法を根拠に認められています。
破産法では「破産手続開始の原因」を以下のように定めています。
(第15条)
- 債務者が支払い不能にあるときは、裁判所は第30条の第1項の規定に基 づき、申立てにより、決定で、破産手続きを開始する。
- 債務者が支払を停止したときは、支払不能にあるものと推定する。
この破産法15条により「支払不能者」[8]借金の支払いができない人は裁判所に申立てを行うことで、破産手続きを利用できることになるわけです。
ただ、注意すべき点として「裁判所に申立てをすれば誰でも破産が認められるわけではない」ことが挙げられます。
つまり、以下が成立しないと自己破産は認められません。
- 申立時点で収支状況を見た場合、借金について「支払不能」であること
- 申立てを受けて裁判官が「破産を認めるべきである」という判断を下したこと
上記の二点があって、初めて自己破産は認められるわけです。
破産が認められるかそうでないかは、「支払不能」が条件になりますので、申立ても審議の結果、「自己破産が認められない(=免責されない)」場合もありますので、注意が必要です。
・・・以上が「債務整理の法的根拠」となります。
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