任意整理に関係する情報は数多くの人が目の当たりにするようになり、将来利息を0円にしてもらったり、返済期間を交渉して月々の負担額を減額してもらったりというメリットは以前より知られるようになりました。
では、任意整理の一連の流れにかかる期間はどのくらいでしょうか?
また、任意整理後に返済を続ける期間はどれくらいかかるのでしょうか?
本稿では任意整理に必要な期間について解説していきます。
任意整理の手続きには数カ月かかる
「任意整理の一連の流れにどの程度の期間がかかるのか?」に関しては、依頼人の債務状況や借入先のカード会社など(銀行・クレジットカード会社・消費者金融など)が変われば、異なってくることになります。
任意整理の手続きは昨今では、平均して、3~6カ月ほどの期間がかかる傾向が高くなっています。
では任意整理の手続きの主要な流れとどれくらいの期間がかかるかを順に解説していきましょう。
なお、任意整理を手掛けることができるのは弁護士および司法書士ですが、ここでは便宜的に弁護士として記載します。
弁護士との相談(準備を含む)
弁護士に任意整理を正式にお願いをする前に相談の時間を確保することが必要です。相談内容は「借入状況」「収支状況」など、依頼人が現在、置かれている実態を説明するというのが主な内容となります。
その際に、必要書類を前もって収集・整理しておくと余計な時間をかけずに手続きを進めることが可能です。
また、必要な持参品は以下の通りです。
- 印鑑、身分証(運転免許証、保険証、パスポート、写真入りマイナンバーカードなど)
- 住民票(本籍地が記載されているもの)
- カード類(クレジットカードや消費者金融のキャシングカード)
- 借り入れ時の内容がわかるもの(契約書、督促状、ATMの利用明細など)
特にカード類や契約書など、カード会社などの名称、借入合計額や借入日、これまでに返済した金額などの情報がわかる資料を持参すると、相談のときに書くことになる「債権者一覧表」という書類の作成が効率良くできます。
弁護士に任意整理を正式に依頼すると「受任通知」が出状される
弁護士に任意整理を正式に依頼することが決定し、委任契約書を交わすと、弁護士からカード会社などへ「受任通知」が出状されます。この段階で、カード会社などからの督促がいったん凍結され、連絡や通知がすべて弁護士事務所宛てに行くことになります。
相談から受任通知の送付までにかかる期間は、資料を取り揃えるなどの準備を、注意を払って行っておけば、即日ということも困難ではありません。任意整理をお急ぎの人は、前もってしっかりと保有している資料を集めたり、資料がない借入についてはカード会社などの名前や借りた金額・時期などを振り返ってメモにまとめ上げておきましょう。
返済総額の確認
提出された資料を基にして、弁護士が借金の正確な額を確認します。受任通知を送った相手のカード会社などに情報開示を依頼することになりますので、返済総額の確認は、相手のカード会社などがいつ情報を開示してくれるかによって、必要となる期間が異なることになります。
現在のところ、目安としては2カ月程度かかると想定したほうがよいでしょう。
カード会社などと交渉し、和解契約を結ぶ
弁護士がカード会社や金融事業者などと話し合いをして、将来利息をゼロにしてもらったり、妥当と思われる返済期間(36~60回払いなど)に調整してもらったりします。
交渉に成功して和解することができると、弁護士がカード会社などと和解契約書を結び、任意整理の手続きはとりあえず完了ということになります。
交渉と和解契約にかかる期間も相手となるカード会社などのスタンスによって違ってきますが、一般的な例としては1~4カ月ぐらいを目途として考えておけば問題ないといえます。
この和解契約締結後に返済が開始するのですが、任意整理の開始から手続き自体の完了までには、合計でおよそ3~6カ月程度の期間を要するというのは一つの目安になります。
なお、この期間は借入先のカード会社などが何社あるか、相手先が任意整理に協力してくれるかどうか、などによって多少の幅があります。
任意整理後の返済期間は5年がメド
上で解説したとおり、任意整理の返済が開始するのは、カード会社などとの交渉が実を結び、和解案が成立するなどの、全ての手続きが終了してからになります。
任意整理後の返済期間に関して言うと、借入先のカード会社などとの交渉によって決まりますので、一律に〇〇年とか□□回と言い切れるものではありません。
しかしながら、将来支払わなければならない利息のカットによって利息が0円になっているため、返済期間が長く設定されているほど、毎月の返済額は少額で済むようになっています。
それを受けて、任意整理では一般的に言って5年(60回払い)など返済期間を長期間で設定してもらうのですが、依頼人の要望や経済状態に応じて3年(36回払い)などに設定することも可能になります。
返済期間の調整については、任意整理の場合は債権者側との合意さえあれば柔軟性が高いといえるでしょう。
任意整理後にブラックリストに載る期間は5年程度
「ブラックリスト」とは
任意整理に着手すると、そのタイミングで「信用情報機関」が「信用事故の情報(「該当の人物は借金を前もって決めた条件で返すことができず、任意整理を行った」という事実を指します)」を記録します。
信用情報機関というのは、銀行・クレジットカード会社・金融事業者などお金を貸す会社が加盟している機関で、クレジットカードの利用状態や債務整理の状況といった「信用情報」を収集して管理しています。信用情報機関が任意整理という信用事故の情報を記録すると、加盟している銀行・カード会社(クレジット会社)などが「この人はお金の返済能力が十分でないかもしれない」と評価し、クレジットカードやローンなどの審査を通過できなくなります。
この状態が、俗にいう「ブラックリスト」に載るということを指します。
「ブラックリスト」に載っていると制限されること
ブラックリストに載っている期間中は、信用が必要な取引、つまり借金やローンなどの申し込みに制約がかかります。具体的に言うと、以下のようなケースがあります。
- クレジットカードが利用停止になり、新たな作成も不可能になる
- 住宅ローン、自動車ローン、多目的ローンなどのローンを設定することができなくなる
- 金融事業者での借金(キャッシング)ができなくなる
- 借金(奨学金など)の保証人になれなくなる
ただ、任意整理のメリットを考えれば、致し方ないものですので、甘んじて受けるしかありませんね。
ブラックリストの期間は5年がメド
一旦ブラックリストに載ると一生涯制限がかかるのかというと、そんなことはありません。
任意整理の場合だと、5年前後でブラックリストが解除され、それに応じて、信用に関する制限も解除されます。
つまり、任意整理後5年程度が経過すれば、クレジットカードの作成やローンの利用などが以前と同じようにできるようになるわけです。
ただし、5年程度の期間が過ぎてブラックリストが解除されても、通知書などが送られてくるわけではありません。本当に解除されたかどうか確認するためには、信用情報機関に直接照会する必要があります。
信用情報機関には、CIC(シー・アイ・シー)、JICC(日本信用情報機構)、JBA(全国銀行協会)の3種類があります。それぞれ手数料を払って郵送で問い合わせることで、自分自身の信用情報がどうなっているのかを確認することができます。また、CICとJICCは窓口やインターネットでの問い合わせにも対応しています。
クレジットカードやローンの審査は、一度落ちると「この人は審査に落ちた」という記録が信用情報に残ります。審査に落ちないよう、ブラックリスト期間が経過したら、ひとまず自分の信用情報がどうなっているか確認するのがよいでしょう。
ブラックリスト期間中の制限事項への対応方法
上述のとおり、任意整理をしてブラックリストに載ると、5年程度の期間、クレジットカードやローンが使用不可の状態となり、新しく借金をすることもできなくなります。
しかし、ある程度はこの制限事項への対応方法がありますので、ここでは、主として「クレジットカードが使えない」という問題への対応方法を解説します。
ブラックリスト中にクレジットカードの代わりとして使うことができるカードは、おおまかに言って3種類ほどあります。
デビットカード
デビットカードは、取引で使うとすぐに決済され、銀行口座からお金が引き落とされるシステムのカードです。
クレジットカードと違って分割払いはできませんが、1回払いであれば対応しているお店や、インターネット上での決済に使うことができます。
プリペイドカード
プリペイドカードはあらかじめお金をチャージしておくことで、決済のときに必要な金額だけを差し引いていくというシステムのカードです。わかりやすい例でいうと、交通系カードのSUICAやPASMOなどが有名ですね。
プリペイドカードにもVISAやJCBなど各種店舗やインターネット決済で使える有名ブランドのカードがあるほか、インターネット上の取引で使えるWEBMONEY、特定の店舗で使えるWAONやNANACOなどがあります。
ただし、プリペイドカードは税金・保険料・光熱費・水道代といった毎月引き落としになるお金の支払いには利用することができません。その点は注意してください。
家族カード
任意整理をした本人に安定した収入がある家族がいる場合、ブラックリスト期間中でも家族カードを作ってもらうことができます。家族カードというのは名義人を親カード、家族を子カードとして、すべての支払いを名義人の口座から引き落とすシステムのカードです。
信用が必要なのは名義人だけなので、例えば夫がブラックリストに載っていても、妻がブラックリストに載っていなければ、名義人として家族カードを発行してあげることができます。
家族カードはクレジットカードとほぼ同じですが、使いすぎには注意しましょう。
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