任意整理の手続きなどが理解できたところで、本稿では任意整理のメリットとデメリットを整理していきましょう。
任意整理のメリット
任意整理のメリットは大きく以下の4つが挙げられます。
- 手続きが簡単(必要書類が少ない、裁判所を介さない)
- 金融会社からの督促が止まる
- 財産を残せるケースがある
- 家族・勤務先・知人・友人等に知られるリスクが少ない
それでは、順番に見ていきましょう。
手続きが簡単
繰り返しになりますが「任意整理」は私的な交渉であり、手続きについて法律で細かく定められているわけではありません。
交渉を進めるなかで、債権者に給与明細などの書類の提出を求められることが稀にありますが、常に提出を求められるわけではありません。自己破産・個人再生では裁判所を介しますので必要書類も多いのですが、「任意整理」はこれらの手続きと比較すると手軽なものとなります。
それに何と言っても裁判所に行く必要がありません。(ただし債権者から訴訟を起こされる場合は除きます。しかしこの場合でも弁護士に一任することで対応を任せることが可能です)
金融会社からの督促が止まる
支払いを延滞すると債権者(金融会社・消費者金融等)から様々な形(手紙や電話、場合によっては担当者の来訪等)で督促を受けます。これらの督促は対応の手間だけでなく、何にも増して「精神的な重圧」がかかります。
弁護士に任意整理を依頼して、相談者と弁護士の間で委任契約が成立すると、弁護士から債権者に通知(受任通知)が行き、借主本人への督促ができなくなります。ここで言う「受任通知」とは、債権者に対して「債務者が弁護士を依頼した」ことを知らせる手紙のことです。
この「受任通知」の目的は「債務者からの弁護士への債務整理の依頼についての通知」、「債務者への取立てをはじめとした一切の連絡禁止の警告」、「全ての交渉は弁護士が行うことの通知」、「取引履歴の開示要求」です。この「受任通知」によって業者は債務者に直接、取立行為をすることができなくなります。(新貸金業法21条1項9号)
財産を残せるケースがある
自己破産は破産申請者の財産を処分して換金し債権者への返済に充当し、残債をゼロにしてもらう手続きです。ですので債務者(破産申請者)には財産が残りません。
また、個人再生は担保のついていない財産は残せるものの担保付借金は担保を実行されて、持って行かれてしまいます。(多いのは自動車ローンの担保としての自動車ですね。ローンの支払いが滞ると債権者は車を引き揚げて換金してローン残額の返済に充当します)
一方で「任意整理」は私的交渉ですから全ての債権者を対象に交渉することは義務付けられていませんので、債務整理する、しない先の選択が可能となります。
したがって担保付の借金は「任意整理」の対象から外すことで、財産を残すことが可能となるのです。(借金に苦しむ人の多くが「カードローン」や「リボ払い」の債務額の大きさで悩んでいますが、任意整理ではこれらの借金のみを対象にすることができるわけです)
同様に保証人が付いている借金も対象から外すことで債権者から保証人に請求が行くことを避けることができます。(例えば連帯保証人がいる債務(住宅ローン)や奨学金などを対象外にすることで、家族や親戚、友人などを巻き込むケースを最小限にすることができます)
家族・勤務先・知人・友人等に知られるリスクが少ない
「任意整理」では対象を選択できますので、親戚や知人・友人等の知られたくない債権者については外すことができます。
また、自己破産や個人再生では様々な書類を裁判所に提出する必要から家族や勤務先に知られてしまうリスクがありますが、「任意整理」の場合、書類の提出が義務付けられているわけではないので手続きについて家族や勤務先に知られることはまず、ありません。(当然、自己破産や個人再生で発生する「官報掲載」もありません)
「任意整理のメリット」は以上となります。
多くの方々が「家族に言えずに借金が膨らんでしまった」ことで、返済不能に至ることから、考えると個人的には「家族・勤務先・知人・友人等に知られるリスクが少ない」というメリットが最も大きいと思います。
任意整理のデメリット
当然といえば当然なのですが、メリットがあればデメリットもあるのが世の常です。「任意整理のデメリット」をまとめてみましょう。
「任意整理」のデメリットは以下のとおりです。
- 信用情報機関に情報が登録されてしまうこと
- 担保や保証人が付いている借金の場合は担保実行や保証人への請求発生するリスクがあること
- 裁判を起こされる可能性があること
では、順番に見ていきましょう。
信用情報機関に情報が登録されてしまうこと
「任意整理」も個人再生や自己破産と同じく債務整理の一つであるため、「信用情報機関」に登録されてしまいます。(いわゆる「ブラックリストに載る」というやつですね)
では「信用情報機関」に何が登録されるのでしょうか?
それは、クレジットやローンなどの契約内容、返済・支払状況、取引事実等がその内容とされています。「任意整理」をすると、その事実が「信用情報機関」に登録されるため、以降、数年間(概ね5年程度といわれています)は新規にお金を借りたり、クレジットカードを作ることはできなくなります。
数年間はできない、と書きましたが個人再生や自己破産に比較すると「任意整理」は短いと言われています。「信用情報機関」に登録されてしまうという、デメリットは避けることができません。
ただ、見方を変えると、現時点で、支払が滞っている以上、劇的に返済環境が好転しない限りは、遠くない将来には「信用情報機関」に登録されるのは時間の問題とも言えます。
いずれは登録されてしまうのであれば、思い切って「任意整理」を進めることは十分にアリ、と個人的には考えます。
担保や保証人が付いている借金の場合は担保実行や保証人への請求が発生するリスクがあること
担保付ローン(メリットの記事でも書きましたが所有権留保付きの自動車ローンなど)や保証人が付いている借金の場合、「任意整理」手続きを実行したことで担保の実行(上記の例で言えば自動車そのものを引き上げる)や保証人への請求が行われてしまうことがあります。
しかし、これらの借金の場合を「任意整理」の対象から外すことで、リスクを回避することが可能となります。
裁判を起こされる可能性があること
債権者の中には「債務整理」の手続きを行おうとすると「貸金返還請求訴訟」という裁判を起こそうとする業者もいます。当然のことながら裁判で敗訴してしまえば給与等の差し押さえが行われることがありますので、「信用情報機関に情報が登録されてしまうこと」と同様に高いリスクが伴います。
個人で「債務整理」の手続きを行う際には、どの業者が訴訟を起こした実績があるかを調べるのは大変です。しかしながら、「債務整理」手続きに熟知している弁護士事務所には、「どの業者(債権者)が訴訟を起こしてくるか」、「どのような訴訟内容であったか」などの経験や対処方法などのノウハウがあるため、そのような債務を対象から外すことで「リスク回避」が可能となります。
以上が「任意整理のデメリット」となります。借金の苦労を無くしていくためには、受け入れなければいけないリスクではありますが、十分なノウハウや実績を持つ専門家に依頼すれば、そのリスクを減じることは可能と考えます。
一人で悩まずに弁護士や司法書士に相談してみましょう。
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