裁判所によって、「再生計画認可決定」がなされたからといっても、「個人再生」の手続きが全て完了したわけではありません。
当たり前の話ですが、「再生計画」に基づく弁済を完了させて、初めて、「「個人再生」の手続きは完了となった」といえるからです。
では、「再生計画」認可後にはどんな手続きがあるのでしょうか?
本稿では個人再生の再生計画認可決定後の手続きについて、ご紹介します。
再生計画認可決定の確定
「個人再生」の手続きにおいて、裁判所は、提出された「再生計画案」について民事再生法に定める要件を満たしていると判断した場合、 再生計画認可の決定を行います。
この再生計画認可決定が確定すると、「申立者(債務者)」は基本的に、その再生計画に定められた返済計画どおりに返済を行っていけば、求められる要件を充足することになり、その後の債務の支払を免れることになります。
「再生計画」においては、「借金総額(債務)の減額」や「長期の分割払い」が認められることになりますので、「再生計画認可決定確定」によって、債務者は「個人再生」手続きによるメリットを享受できることとなります。
再生計画に基づく弁済の遂行
上述のとおり、裁判所による「再生計画認可決定の確定」により、「申立者(債務者)」は、その計画に従って弁済を遂行していくことになります。
「再生計画」に基づく弁済を、どのくらいのスパンで弁済していくのか、いつの時点から開始していくことになるのかは、再生計画における弁済開始の時点の定め方にもよります。
毎月弁済ということであれば、再生計画認可決定日の属する月の翌月から弁済を開始するという計画になるでしょう。
3か月に1回の弁済という方式もとれます。この場合には再生計画認可決定日の属する月の翌月から数えて3か月後から弁済を開始する、とするのが一般的です。
再生計画認可決定日の属する月の翌月から数えて3か月後というのは、例えば、令和2年7月25日に再生計画認可決定が確定したのであれば、同年10月から弁済を開始するということです。
この「再生計画」に基づく弁済を遂行し、弁済額をを完済することによって初めて、「個人再生」の手続きは完全に終了したと言えるのです。
再生計画の途中で弁済ができなくなった場合
上述の通り「再生計画」に基づく弁済を全て完了すれば、「個人再生」の手続きは完全に終了したと言えます。
しかしながら、「再生計画」に基づく返済期間は3年から5年もあります。
この期間で返済していく間で「申立人(債務者)」を取り巻く環境や事情が変わってしまい、その結果、「再生計画」に基づく弁済を遂行していけなくなる、という事態が生じることも十分にあり得ます。
上述のように「再生計画」に基づく返済がなされなかった場合、債権者による再生計画取消しの申立てによって、「再生計画」そのものが取り消されてしまう場合があります。
「再生計画」が取り消されてしまえば、「再生計両認可決定」による減額・分割払いも「取り消し」ということになり、その時点で「個人再生」の申立をする前の状態に戻ってしまいます。
そこで、「再生計画」に基づく弁済ができなくなった場合には、新たな手段を考える必要があります。
どのような手段となるのでしょうか?順に見ていきましょう。
再生計画の変更の申立て
「再生計画」の途中で返済ができなくなった場合には、「再生計画」が取り消される前に、「再生計画」の変更を申し立てることができます。
「再生計画」の変更が認められると、「再生計画」で定められた債務の支払期限を、「再生計画」で定められている債務の最終期限から2年を超えない範囲で延長してもらえます。(支払期間が2年延長できるわけです)
ただし、当然と言えば当然なのですが、「再生計画」の変更は、やむを得ない事情によって再生計画の遂行が著しく困難である場合に限られます。
ハードシップ免責の申立て
「再生計画」の途中で返済ができなくなった場合でも、「再生計画」に基づく基準債権等に対する弁済のうち4分の3以上の返済が終わっている場合には、「再生計画」が取り消される前に「ハードシップ免費」を申し立てることができます。
「ハードシップ免責」とは、「申立者(債務者)」がそれまで再生計画上の返済をしてきたにもかかわらず、「申立者(債務者)」に責任のない事情によって、残る返済をすることが極めて難しくなってしまった場合に、非常に例外的な救済措置として、残る借金を全て免除するという制度です。
「ハードシップ免責」が許可されると.返済ができなくなった部分についての支払いを免責してもらえます。
ただし、上述の通り、単に「4分の3以上を返済し終わっている」だけではなく、「申立者(債務者)」の責めに帰すことができないやむを得ない事情によって返済が極めて困難になったことが必要とされています。
また、「ハードシップ免責」の効果は「住宅資金特別条項」にも及ぶため、「ハードシップ免責」が認められると住宅資金貸付偵権者から別除権を行使され、住宅を失うおそれがある点にも注意が必要です。
再度の個人再生申立て
「再生計画」が取り消されてしまった場合には、「再生計画」の変更等を申し立てることはできなくなります。
また、変更申立て等の要件を満たさず、これらを利用できないケースもありえます。
このような場合には、再度、「個人再生」を申し立てるという方法も考えられます。
再度の「個人再生手続き」が開始されると、前回の「再生計画認可決定による減額」や「分割払い」の効力は失われることになり、申立て前の「債権」が復活したうえで、再度の手続きにおける認可決定によって新たに減額等がなされることになります。
他の債務整理方法の選択
「再生計画」に基づく返済ができなくなった場合、再度の個人再生申立てではなく、「任意整理」や「自己破産」などの別の債務整理手続きを選択するということも考えられます。
・・・以上が「再生計画認可決定後の手続き」に関するご紹介でした。
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