借金を抱えている状態だと、年中、精神が借金返済に苛まれたままとなります。
一時も早く借金問題を解消したいものですが・・・。
借金問題を一気に解決するための法的な手続きが債務整理。
その中でも「任意整理」と「自己破産」の中間的な存在・・・「個人再生」。
「個人再生」では借金を大きく圧縮でき、住宅などの財産を維持できるという魅力ある制度です。本稿では個人再生のメリットについて、もう一つの法的整理である「自己破産」と比較する形で、詳しくみていきます。
「個人再生」のメリットしては以下が挙げられます。
- 資格制限がない
- 債務の原因が影響しない
- 持ち家を手放さなくても良いケースがある
- 自家用車も手放さなくても良いケースがある
では、それぞれ見ていきましょう。
メリット①~資格制限がない~
自己破産では手続きに入ると免責(借金を返済しなくても良い状態)が認可されるまでの期間に就くことができない職業があります。
以下がそうです。
- 弁護士
- 司法書士
- 古物商
- 宅地建物取引主任者
- 警備員
- 保険外交員 等
しかし、個人再生ではこのような制限はなく、職業を問わずに手続きを利用できます。
メリット②~債務の原因が影響しない~
自己破産では免責を得られないケースが規定されています。
これを「免責不許可事由」と言います。「免責不許可事由」のうち、「借入の経緯に関すること」として以下のようなものがあります。[1]「免責不許可事由」であったとしても程度によっては自己破産が認められるケースもあります。
- ギャンブル(=「賭博」:競馬・競艇・競輪・パチンコなど)による借金
- 先物取引・不動産投資・仮想通貨取引・FX(外国為替証拠金取引)などによる借金
- クレジットカードを利用した現金化[2]新幹線のチケットを大量購入して現金化するなどです。など転売行為による借金
- 遊興費[3]遊びや趣味・娯楽等の飲食費に使った金銭を指します。など浪費による借金
しかし、「個人再生」では債務(=借金)の原因が手続きの利用可否に影響をあたえることはありません。その点で借金の原因が上記の場合で、債務整理を検討する場合は「個人再生」を選んだほうが良いでしょう。
メリット③~持ち家を手放さなくても良いケースがある~
一般的に持ち家の住宅ローンが残っている場合は、その持ち家に「抵当権」が付いていますよね。住宅ローンを完済していなくて、ローンが残っている状態で自己破産の手続きを行うと、銀行などの住宅ローンの債権者は抵当権を実行して、持ち家を売却したお金でローンの回収を行ってしまいます。
つまり持ち家を手放さなければいけなくなります。
しかし、個人再生手続きの場合は「住宅ローンだけは減額せずに支払いを継続し、他の借金は減額する」ということが可能です。
この手続きについては民事再生法における「住宅資金貸付債権に関する特則」というものに定めがあり、住宅ローンを支払い続けるタイプの個人再生手続きを「住宅資金特別条項を定める個人再生手続」と呼びます。
ただ、この特別条項を利用する場合には、住宅ローンを個人再生手続き開始以前と変わりなく支払い続けなければいけないうえに、その他の債権者に対しても再生計画案に従った返済額を支払わなければいけません。
こうなると、毎月の返済額について余裕をもって支払うことができる人でなければ、利用できないわけですね。
また(これも重要なことですが)、住宅ローンを延滞している場合には、再生計画が確定するまでに、延滞金を全て支払って遅延のない状態にしなければなりませんので、もし延滞額が高額であると難しいことになります。
実際の返済額をシミュレーションしてみると・・・。
- 住宅ローンの残高:3000万円(ローン残額が家の価値を上回っている場合です)
- 住宅ローンの返済月額:10万円
- 他の借金総額:700万円
- 他の借金の返済月額:12万円
- 返済月額の合計:22万円
- 無理なく返済できる金額:15万円
⇒ 15万円-22万円=-7万円(毎月7万円の不足)
ここで小規模個人再生手続き後を見ると。
- 住宅ローンの残高:3000万円(ローン残額が家の価値を上回っている場合です)
- 住宅ローンの返済月額:10万円
- 他の借金総額:140万円(700万円の5分の1)
- 他の借金の返済月額:3.9万円
- 返済月額の合計:13.9万円
借金が減額されますので、返済月額が13.9万円(8万円程度が減る計算)となり、無理なく返済することが可能になります。
メリット④~自家用車を手放さなくても良いケースがある~
自己破産では「価値のある(=換金できる)資産は、お金に換えて借金の返済に充ててからでないと借金をゼロにできない」ことになっています。[4]これを「清算価値保障の原則」と言います。
自分名義の財産、例えば自動車の場合、資産価値が20万円超であれば処分(換金)しなければなりません。
これに対し、個人再生では自分名義の自動車の価値は「清算価値」とされますが、その自動車の価値だけ個人再生手続きで返済していけば手放さなくとも良いとされています。
例を挙げて見ていきましょう。
今、借金総額が1000万円ある人がいて、100万円の価値のある自動車を保有していたとします。(便宜上、他の財産はないとします)
【自己破産の場合】
- 100万円(自動車を売却してつくったお金)を債権者全員に分配し、残った900万円は免責。
【個人再生の場合】
- 1000万円が200万円に減額(5分の1まで減額)されます。
- 200万円を36回で支払うことができれば、車を手放す必要はなし。(月額5万6000円程度の支払い)
↑ 自己破産の場合に比べて、返済金額が大きい(200万円>100万円)ため、自家用車を手放さなくても良い。
つまり、個人再生手続きでは「清算価値保障原則」がありますから、「車を手元に残したまま、自己破産と同額の免責を受けること」は認められない、ということです。
しかしながら、どうしても手放したくない愛車であれば、自己破産より免責額が減っても、個人再生手続きを選択するのもアリかもしれません。
ただし、ローン支払い中の自動車については車そのものが担保になっており、車検証の名義人がローン保証会社であれば、上述の方法は取れません。(所有権留保特約によるものです)
この辺りは弁護士と相談するべきでしょう。
以上が「個人再生」のメリットです。
ポイントとしては「債務超過に至った原因が問われない点」、「住宅・自家用車などの資産を残せる可能性があること」が大きいと言えます。
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